オフィス・事務所移転時の
原状回復費削減ノウハウ
2021.11.22
保証金・預託金・敷金の違いと返還トラブル
コロナの影響で引っ越しを検討・実施されている企業も多くなりましたが、テナントや事務所の移転を含む不動産取引の中で多いのが補償金や敷金の返還トラブルです。
まずは、保証金や預託金、敷金の違いについて解説し、トラブルが発生したときの対応方法についても解説します。
預託金と保証金の違い
預託金とは、賃貸借契約の際に借主が貸主に対し、無利息で預け入れる金銭の総称であり、敷金、保証金のことです。
預託金には、敷金や保証金が含まれていますので、敷金や保証金のことを預託金といっても間違いではありません。
保証金と敷金の違い
現在の不動産賃貸において、保証金と敷金の違いはほぼありません。
保証金と敷金の相違部分
敷金は賃貸借契約の一部とされますが、保証金は「金銭消費貸借契約」とされる場合もあります。
賃貸借契約とは別と考えられることから、仮に家賃が上昇した場合、敷金であれば積み増す必要がありますが、保証金であれば、積み増す必要はありません。
しかし、契約内容によっては、保証金であっても積み増す必要がある場合がございますし、敷金でも積み増す必要がないこともあります。契約内容をよくご確認ください。
また、ビルオーナー(大家さん)が破産や民事再生、建物を売却する場合も扱いが変わってきます。
敷金であれば引き継がれますが、保証金の場合は引き継がれない(返還義務がなくなる)ことがあります。
ただし、賃料の6か月を超える敷金である場合は「金銭消費貸借契約」とされることもありますし、保証金が賃料の6か月以内の場合は敷金と同義とみなされることもあります。
また、入居中に裁判所の競売にかけられた際は、建物や土地の抵当権の設定日と入居日(明け渡し日)、契約日などによって取り扱いが変わってきます。
保証金と敷金の共通部分
保証金も敷金も賃料の不払いや原状回復費用などの債務を担保する性質を持っていますので、言葉の違いよりも、賃貸借契約書でどのような意味になっているのかが重要です。
ちなみに、西日本と東日本では商習慣の違いから、礼金の習慣がなかった西日本は保証金+敷引き特約(保証金のうち返還されない分)、礼金の習慣があった東日本は敷金+礼金というように分かれていました。
また、東日本でもビルオーナーが会社のときは保証金、個人のときは敷金というように分かれていることもあります。
なお、事業用物件の場合、退去時に返還されない保証金の分と礼金は、消費税の対象になります。
保証金や敷金の相場
物件によりバラつきがあり、家賃24か月分から6か月分と差があります。
最近は保証金の相場が低くなってきており、6か月程度の物件が増えています。
保証金と保証料の違い
文字が似ている保証金と保証料ですが、内容が異なります。
先ほどご説明したとおり、保証金はビルオーナー(大家さん)に無利子で預け入れる金銭で、保証料は保証会社に支払う金銭です。
保証会社との契約により異なりますが、一般的には何らかの理由で家賃を支払えなくなり滞納したときに、保証会社が家賃を補填してくれます。
会計上の仕分けは?
敷金や保証金の勘定科目は、契約書の内容によって異なります。
退去時に全額返金・原状回復費用を差し引いて返金されるのであれば、「敷金」か「差入保証金」という科目で処理します。
退去時に原状回復費用が差し引かれたときは、「修繕費」か「雑損失」を用いて計上します。
しかし、敷金や保証金の一部を償却することが定められている契約の場合(入居した期間に応じて敷金や保証金の返金額が変わる場合)は、「長期前払費用」か「権利金」で処理します。
賃貸借契約書の内容によって処理が異なりますので、ご注意ください。
ちなみに保証料は「支払い手数料」か「保証料」。20万円を超える場合は「長期前払費用」で計上し繰延資産として処理します。
返還時期は契約書による
敷金や保証金の返還時期は退去後に返還されますが、賃貸借契約書に明確に記載されていないことも多くトラブルになりやすいポイントです。
例えば、賃貸借契約書に「退去後、1か月以内に敷金を返金する」と明確に記載されていれば、返還時期のトラブルは防げます。
「退去後、すみやかに敷金を返金する」と記載されている場合は、注意が必要です。
返還時期が明確に記載されていないため、返還請求をしないと返してくれないことも多々あるからです。
もし、賃貸借契約書に返還時期が明記されていないのであれば、退去前に話し合いの場を設けて、返還時期を書面に残しておくことをおすすめします。
返還されないときの相談先
居住用物件であれば「国民生活センター」や「法テラス」などがおすすめですが、消費者である個人を対象としているため、事業用物件(法人)には相応しくありません。
店舗や事務所などのテナント物件であれば、下記の相談窓口がおすすめです。
・弁護士
・法人やテナント物件に対応しているADR機関
※ADRとは
裁判外で紛争を解決する手法であり、裁判に比べて簡易・低廉・柔軟に紛争解決を図ることが可能です。お互いが柔軟な解決や非公開での解決を目指すのであれば適切ですが、真実などの追及をするのであれば裁判が適切になります。
まとめ
入居中に遺産相続や物件の売買などで、ビルオーナーが変更になった場合は、保証金や敷金の取り扱いは複雑になり、返ってくると思っていた金銭が返ってこないこともありえます。
トラブルを避けるためにも、賃貸借契約書や特約の内容をしっかりと確認し、不明な点があれば、ビルオーナー(大家さん・貸主)と交渉するようにし、必要に応じて弁護士に入ってもらうようにしましょう。
いずれにしても、どのような契約をしているのかが重要といえます。
株式会社JLAでは、オフィス・店舗の移転トラブルを解決するお手伝いをさせていただいております。お気軽にご相談くださいませ。