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OWNEDMEDIA オフィス・事務所移転時の
原状回復費削減ノウハウ

2021.5.10

店舗の原状回復はどこまで?費用とトラブル

店舗の原状回復


店舗・テナントを閉店し賃貸テナントから退去する際、物件の内装を契約書や特約の内容に沿って戻すのが原状回復です。同じ原状回復という言葉でも住宅と店舗では全く異なります。

居住用と異なる事業用(店舗・テナント)物件の原状回復の範囲とは

居住用物件の原状回復の範囲は、ガイドラインがある

以前から原状回復のトラブルが多いこともあり、国土交通省では居住用物件の原状回復ガイドラインを定めています。

居住用物件(住宅)であれば、経年劣化や自然損耗、通常損耗は貸主(大家さん・ビルオーナー)が負担し原状回復します。居住用物件は、内装工事や造作を行わない事がほとんどなので、通常損耗・経年劣化は予想できるため、月々の家賃に通常損耗などの補修費用を含めることが可能だからです。

<参考>国土交通省:原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに示されている原状回復

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反(注)、その他通常の使用を超えるような使用による損耗、毀損を復旧すること」・・・入居時点と同じ状態に戻すことではありません。

居住用物件(住宅)は耐用年数を計算して原状回復費用を算出

カーペット、クロスなどの耐用年数は6年、木製の戸棚は8年、洗面台などの給排水設備は15年と減価償却資産の耐用年数等に関する省令で耐用年数が定められています。

例えば2020年に設置したカーペットなら、2026年に価値が0円になる一次関数で退去時点の価値を算出(経年劣化分を算出)。退去時に交換が必要なら、残りの価値と工事費用・廃棄費用を考えて原状回復費用を算出します。

店舗やオフィス・テナント物件は原状回復の範囲が物件ごとに異なる

店舗やオフィスの場合は賃貸借契約書や特約の内容により、入居したときと同じ状態に戻す原状回復が必要になるケースが大半を占めます。

店舗は、使用状況が業種業態によって大きく異なり、月々の家賃に通常損耗などを含めることが困難である点と、テナント負担で内装工事(入居工事)を行っていることが多いからです。

どこまで原状回復が必要なのかは、物件により異なります。入居時に締結した賃貸借契約書・特約に明記されていますので、ご確認ください。

また、会計処理で入居工事の費用を資産計上しているはずです。帳簿もあわせて確認することをおすすめします。

<原状回復特約(経年劣化を含めて原状回復)の例文>

以下は、賃貸借契約書で原状回復について定めた条項の例です。参考にしてください。

乙は乙の費用により新設又は付加した諸造作、設備等及び乙所有の備品等を乙の費用負担により撤去するとともに、乙による本物件の変更箇所及び汚損、損傷個所を修復し、壁・天井・床仕上材の塗装、貼替を行った上で本物件を○○年○○月○○日の引き渡した時点の状態に復して甲に明渡す。使用する塗料・壁紙の仕様は別表○○に、原状回復する範囲は○○に規定する。

<契約書や特約に明記されておらずトラブルになった判例>

以下は、原状回復についてトラブルとなり裁判になった例です。参考にしてください。

賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である(最高裁 平成17年12月16日第二小法廷判決)

また、住居用マンションの一室を事務所として、住居用と同じ状態で賃貸している場合、住居用と同じ原状回復で良いとされた判例(東京簡裁 平成17年8月26日判決)があります。

民放改正による変化

2020年4月に改正民法が施行され、賃貸借の退去時に必要となる原状回復が変更されています。ガイドラインに沿う内容になっていますが、居住用・事業用の区別はありません。

なお、改正民法前に契約・契約更新した契約は、旧民法(改正前)が適応されますので、ご注意ください。

店舗の原状回復費用は高額

店舗の原状回復費用は高額

一般的に店舗の場合、住居用と異なり壁紙や天井のクロスを貼り替える、間仕切り壁を解体する、内装を取り壊すなど入居時点と同じ状態に戻してから退去する必要があるため、原状回復工事費用が高額になりがちです。

居抜き店舗で入居した場合でも契約内容によってはビルの構造体が見える(コンクリートが見える)スケルトンに戻さなければならないこともあります。

また、店舗物件は賃貸借契約書や特約で、ビルオーナーが指定する業者で原状回復工事を行うことを義務づけられていることも高額になる理由のひとつです。

特に飲食店は、給排水設備工事、厨房機器の処分、空調機器や排水設備のクリーニングなどがあるため、オフィスよりも原状回復費用が高額です。

賃貸テナント物件の原状回復の費用相場

賃貸テナント物件の原状回復工事の費用相場は、坪3万円~30万円と幅広いです。

小規模オフィスの場合は坪単価・相場が安くなり、大規模オフィスや大手ディベロッパー物件は高額になる傾向があります。

相場といっても10倍近い差がありますので、あまり参考にならないかもしれません。

エアコン(空調)を移設・増設したなら、退去時に戻す

間仕切り壁やパーテーションの設置などで、エアコンや換気設備(空調設備)を移設・増設しているケースがあります。

退去時は元の状態(元の位置)に戻す必要がありますから、原状回復に空調工事が追加されます。

また、飲食店などで空調機器の汚れが酷くダクトを交換する工事が必要になるケースもあります。

居抜き物件の原状回復は少ない?トラブルの原因?

飲食店が入退去する際、原状回復や入居工事が高額になってしまうことから、店舗内装をそのまま次の借主に譲渡(造作譲渡)する居抜き物件があります。場合によっては、ほぼ無償で譲渡する場合もあります。

新しい借主(後継テナント)にとって入居工事費用が抑えられ、元の入居者にとっても原状回復費用が抑えられるメリットがある反面、原状回復義務も新しい借主に譲渡されますので、注意が必要です。

スケルトン物件の原状回復義務は契約書でチェック

居抜き物件として入居したとしても、元々はスケルトン物件であったため、退去する際はスケルトン返しをしなければならないこともあります。

居抜きで什器などの設備を前の入居者から引き継いだとき、原状回復義務も引き継ぐことになるからです。入居時は居抜き物件として内装がある状態で契約し費用を抑えられたため、退去時も同じ感じだと思っていると痛い目に合います。

退去時に原状回復でスケルトンに戻さなければならないことを把握しておらず、原状回復費用が高額になりトラブルになることがあるのです。

もちろん、次の借主が見つかり居抜きで退去できるケースもありますが、居抜き退去を希望していても時期や物件の状態によってできないことも考えられます。

最近は、飲食店だけではなく店舗・オフィスでも、居抜き物件が増えてきました。居抜き物件を考えられているのでしたら、退去時のトラブルを防止するためにも、契約する前に賃貸借契約書、特約の内容をしっかりと確認することが大切です。

契約内容が曖昧であれば弁護士や専門家に相談しながら、ビルオーナー(管理会社)に回答を貰うようにしましょう。

また、居抜き物件(造作譲渡)として退去することを考えているのなら、トラブルになる可能性が高いため専門家に間に入ってもらい交渉することをおすすめします。

リノベーションや修理をしているとき

長年、同じ物件を使っているとリノベーションや修理をすることがあります。リノベーション工事などで、入居した当時の状態がわかりにくくなっていることがありますのでご注意ください。

事前にビルオーナーと原状回復について打ち合わせをしておくことをおすすめします。

高額な原状回復やトラブルを防ぐには

トラブルを防ぐには?

移転が決まったら早め早めの行動

店舗物件の場合、原状回復を終了してから退去することが多く、退去日までに原状回復がすべて完了している必要があります。また解約手続きの他、官公庁への届け出などもあり、かなり煩雑です。

住宅(居住用)の場合は退去してから原状回復を行います。居住用の感覚で行動すると退去日までに工事が完了せず、余計な出費(遅延損害金など)が増えてしまいます。

また、解約予告期間もテナント物件は6か月と長いことが多いです。

移転が決まったら、まず原状回復工事の見積書取得をする行動をしましょう。見積もりが提出されたら、内容を確認し余分な工事が入っていないか、施工範囲は正しいか、価格は適切かどうかを確認し、不明な点は早めに回答をもらうようにしてください。

賃貸借契約書・特約の内容を確認し、どこまで原状回復が必要か把握する

スケルトン渡しで退去するのかなどの原状回復の範囲は、賃貸借契約書または特約に記載されていますが、内容があいまいな場合があります。

もし、入居してからの年数が経っており、内容が正確に理解できない場合や現状と契約書で内容が異なっている、事前に聞いていた情報と違いがあるのならば、トラブルになる可能性がありますので、専門家の力を借りて交渉するようにしましょう。

また、敷金・保証金の返金についても確認しておくようにしましょう。

専門家の力を借りる

貸主(ビルオーナー)は「テナント物件なのだから、通常損耗を含めて原状回復する」のが常識だと考えているが、テナント側は「通常損耗まで回復すると契約書に記載されていないから通常損耗の原状回復は不要」と解釈しトラブルになった事例(大阪高裁 平成18年5月23日判決)や、不慣れな建設・不動産業界に翻弄され予想以上のコストが必要になったケースなどが多々あります。

また一度トラブルになると訴訟費用や弁護士費用が必要となり、経営的にもマイナスになる可能性が出てきます。

専門家の力を借りることで必要な情報を得ることができますし、店舗移転や原状回復をトラブルなくスムーズに行いトータルコストを削減することもできます。

「難しそうだ」「トラブルを回避したい」「トータルコストを削減したい」と感じているのなら、専門家に依頼するのがおすすめです。

この記事を書いた人

柳澤 英一郎

 

株式会社JLA 執行役員 
「原状回復」コンサルタント

過去2000件以上の査定経験がある。 ◇担当者からの一言 ゼネコンや大手デベロッパーなど多くの見積書で査定を行ってきました。 各社で特徴や利益構造も異なりますが、公平かつ適正な査定を見据えて、毎案件を確然たる意識で対処いたします。

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