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原状回復費削減ノウハウ

2021.12.15

「現状回復」「原状回復」「現状復帰」「現状復旧」の漢字違いとは?

「現状回復」「原状回復」「現状復帰」「現状復旧」の漢字違いとは?


読み方が同じ「原状回復」「現状回復」と似たような意味でつかわれる「現状復帰」「原状復帰」。そして「現状復旧」「原状復旧」「原型復旧」について、不動産の立場での意味をお伝えします。

「現状」の漢字の意味

現状とは、今の状態という意味で使用されます。

例えば、次のような使い方があります。

  • 現状維持
  • 現状の分析
  • 現状から抜け出す

現状回復と書いてしまうと、今の状態に回復するという意味になってしまいますから、意味不明な言葉になってしまいます。

ですから次のような使い方は、漢字の意味的に誤りです。

  • 現状回復義務
  • 現状復帰義務

パソコンやスマホなどで「げんじょう」と入力すると、現状が表示されますので、ご注意ください。しかし現在では、見積表記などを見ても「現状」と表記しているものもあり、同じ意味として使用されているのが実情のようです。

「原状」の意味

原状の意味

原状とは、元の状態という意味で使用されます。

一説によると、工場を撤去する際に、野原や原野と同じ状態まで戻すことから、元の状態に戻すことを原状回復としたそうです。

ただし、現在の日本の不動産において「原状回復」=「元に戻す」という意味は変化しています。

原状回復ガイドラインや民法の原状回復とは

国土交通省が平成10年(1998年)3月に取りまとめ、平成16年(2004年)2月及び平成23年(2011年)8月に追加改定された原状回復ガイドラインでは、次のように原状回復を定義しています。

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

簡単にいってしまえば、原状回復は、入居者が借りた当時の状態に戻すこととは限らないと定義されました。

また令和2年(2020年)4月の改正民法では、次のように原状回復について明記されました。

民法第621

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

621条にある「原状に復する」のことを原状回復といい、「原状に復する義務」のことを原状回復義務といいます。

法律では意味が違う「原状回復」

先ほどお伝えしたように不動産においては、「原状」の漢字本来の意味と、法律の意味するところが異なっていますので注意が必要です。

ただし、法改正を知らず「原状回復とは入居時点の状態に戻すこと」と捉えている方もいらっしゃいますし、契約(特約)内容によって、法の定めと異なる状態になっていることもあります。

また、民法や消費者契約法(対個人のとき)、借地借家法、宅地建物取引業法に乗っ取り、双方合意のもと契約を「原状回復」=「入居時の状態に入居者負担で戻す」という内容にした場合は、「原状回復とは入居時点の状態に戻すこと」になります。

契約内容によって、「原状回復」という意味が変わってくるのです。

原状回復工事とは

原状回復工事とは、原状に回復する工事のことですが、どこまで回復させるのか、誰が(入居者orビルオーナー)費用負担するのかがポイントです。

本来であれば、賃貸借契約書や特約で細かい点まで決めておく必要があるのですが、実際は大雑把なことも多く、費用負担の区分(原状回復範囲)について、もめることも多く裁判になる、泣き寝入りするといったことが多々あるからです。

原状回復義務とは

費用を負担し原状回復しなければならない義務のことを「原状回復義務」といい、多くの場合、入居者側に「~~~に対して原状回復義務がある」という使い方をします。

裁判では「空調機器の清掃に対しての○○は原状回復義務を有するもの」といった使い方をします。

賃貸不動産においては、居住用、事業用、工場用、土地だけなど関係なく原状回復義務が賃借人(お金を払って借りる人や法人)にあります。

「現状復帰」ではなくて「原状復帰」とは

お伝えしたとおり、現状復帰と書くと現在の状態への復帰という意味となってしまいますので「原状復帰」の意味についてお伝えします。

「原状復帰」は建設業や建設関係者が使用する言葉であり、「原状回復」と同じ意味として使用されます。

「原状回復」は原状に戻すこと、「原状復帰」は原状に戻す行為とする場合もありますが、原状回復工事という言い方もあるので、同じ意味と捉えて問題ありません。

「原状回復」は契約や法律用語、「原状復帰」は建設など工事するときの用語とするとよいでしょう。

「現状復旧」ならぬ「原状復旧」とは

「現状復旧」ならぬ「原状復旧」とは

現状復旧も現在の状態への復旧となりますから、意味不明の言葉になってしまいますので「原状復旧」についてお伝えします。

不動産においては「原状復旧」も「原状回復」と同じ意味で使用されます。

なお、「復旧工事」は「災害復旧工事」というように使われ、土木工事で使われることが多いです。

災害の復旧工事では、元の状態(原形)に復旧することができないこともあるので、可能であれば原形に戻す工事を行い、不可能であれば従来と同じ機能(効用)とすることや、代替品を使用し復旧することもあります。

ちなみに「復旧」とは「壊れたものや傷んだものを、もとの状態にすること。もとの状態に戻ること」という意味です。

「原型復旧」ではなく「原形復旧」とは主に災害で使われる

「原型」とは「製作物の元の型」という意味で、型にはパターン、タイプといった意味があります。

「原形」とは「ものごとが変わる前の形」を指す意味ですので、「原型復旧」ではなく「原形復旧」が正しい使い方となります。

また、官公庁が出している災害復旧の文書でも「原形」という漢字を用いていることからも「原形復旧」とするのがよいと考えられます。

「原形復旧」も「原状復旧」と同じように災害復旧で使われることが多く、賃貸不動産において元の状態に戻すことを指す言葉としては、ほとんど使用されません。

まとめ

賃貸不動産において、一般的に使われるのが「原状回復」と「原状復帰」です。

「原状」と「現状」では意味が変わってきます。PCで入力していると、つい漢字を間違えてしまうことが多いので、注意するようにしましょう。

この記事を書いた人

柳澤 英一郎

 

株式会社JLA 執行役員 
「原状回復」コンサルタント

過去2000件以上の査定経験がある。 ◇担当者からの一言 ゼネコンや大手デベロッパーなど多くの見積書で査定を行ってきました。 各社で特徴や利益構造も異なりますが、公平かつ適正な査定を見据えて、毎案件を確然たる意識で対処いたします。

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