2021.12.15

オフィス移転動向【2021最新情報】

2021年11月現在のオフィス移転動向として、首都圏（東京・神奈川・埼玉・千葉）から地方へと本社を移転する企業が増えており、首都圏外から首都圏への移転が少なくなっています。

当記事では、オフィス移転動向のポイントと賃貸オフィス市場動向などお伝えします。

本社移転した企業

帝国データバンクによると2021年1月から6月までの6か月間で首都圏外へ本社を移転したオフィス移転件数は186件。2021年は300社あまりが首都圏外へ本社を移転する流れが予想されています。

下記の企業が都内から地方へ移転しているように、首都圏外への移転は2022年以降も多くなると思われます。

• 東京都渋谷区から北海道ニセコ町に移転した紅茶卸大手のルピシア（2020年7月移転）
• 東京都から兵庫県淡路島に移転した人材サービス大手のパソナグループ（2024年５月末までに移転予定）
• 東京都中央区から福島県いわき市に本社を移転「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産（2020年10月発表）
• 東京都中央区から広島県福山市に本社を移転統合した老舗薬品メーカーの森田薬品工業（2020年９月移転）

どの企業も移転前から移転先と繋がりがあり、ゼロベースで移転している企業はないことにも注目です。

移転しない理由

JLLによる2020年5月のアンケート調査では、8割以上の企業が緊急事態宣言後、オフィスは変わると考えていましたが、6か月後の2020年11月のアンケート調査では6割以上の企業が変化なしと答えています。

移転しない代表的な理由として、下記が挙げられています。

• アフターコロナで、どの程度の面積が必要になるか現時点で不明なため
• 定期借家契約で契約期間が残っているため
• オフィス移転はせずにレイアウトを変更した
• 在宅勤務の導入割合が未定で、必要スペースなどが検討できない
• 取引先が首都圏にしかないので、地方への移転が難しい
• オフィス移転をするメリットがない

多くの企業はコロナによる情勢がどうなるか不明であることも考え、様子見のようです。

地方にオフィス移転するメリットとデメリット

国により税制優遇処置やコロナによる社会情勢の変化などで、地方への移転を検討する企業が増えてきていますが、現段階では多くの企業は移転に消極的かもしれません。

日本の多くは中小企業であり、地方移転はメリットよりもデメリットやリスクの方が大きいと判断されるケースが多いためです。

地方にオフィスを移転すると、次のようなメリットが得られます。

• 政府や地方自治体による優遇税制が受けられる
• 従業員の通勤時間や通勤手当の減少（ワークライフバランスを適正化しやすい）
• 新たな商圏を獲得できる
• 家賃を安く抑えることができる

例えば、北海道札幌市では人件費が最大1.5億円、開設費が最大6,000万円の本社機能移転促進補助金がありまし、茨城県ではAI、IoTなど新たな成長分野において県外から県内へ本社・本社機能などを移転する場合、上限50億円の補助をおこなっています。

一方で地方に移転するリスク、デメリットも存在しています。

• 求人ができるか（東京の方が求人しやすい。知名度のない中小企業にとって地方で募集してもゼロであるリスクもある）
• 社員が移転に応じてくれるか（共働き世帯や社員のマイホーム、住宅ローンなどをどうするのか）
• 新規顧客開拓をする必要がある（新たな関係をゼロから作り上げていく必要がある）
• 市場規模が小さい（大企業のように支店や営業所があるのであれば問題ないが中小にとっては難しい）
• 補助や税制優遇のメリットを活かせるのは大企業がメインであり、中小零細企業は対象外であることも多い

以前は製造業の大企業が移転すると下請けの中小企業も移転することが多かったのですが、物流やリモート会議、出張に要する移動時間の短縮などにより、大企業が移転したとしても、下請け企業は移転しなくてもよくなってきたという側面もあり、中小企業が地方へ移転するのは、考えにくい情勢です。

首都圏の空室率は上昇し、家賃は低下しつつある

2018年以降、新築オフィスビルが大量に供給され、2019年1月に初めて都心の空室率が１％を下回りましたが、2021年９月末時点の都心空室率は4.48％と高くなっています。（数値はニッセイ基礎研究所による）

また、1坪あたりの都心の成約賃料は、2021年10月が22,404円、前年同月比で-1.371円でした。ただし、名古屋では前年同月比+1,013円、大阪では前年同月比+1,001円でした。（ビルディンググループ調べ）

しかし、コロナによる社会情勢の変化により、地方への移転を考えたもののデメリットが多く、東京都内での移転を水面下で計画している企業も存在しますので、家賃はおおむね横ばいになると思われます。

今後の見通しとポイント

コロナがオフィスや働き方、災害時のリスクを見直すきっかけとなったことは間違いなく、オフィス移転需要は今後も伸びていくことが考えられます。

一方で在宅ワーク（テレワーク）、リモート会議などを経験した方のなかには、次のようなネガティブな意見も出ています。

• 在宅では仕事に集中しづらい
• 人間関係が希薄になってしまった
• 家族にストレスがある
• 社内でのレスポンスが悪くなった

日本の住宅事情を考えると、自宅に専用の部屋を設けて仕事をするのは困難であることを考えると、納得のいく内容です。

また、緊急事態宣言下で在宅ワークへ全面的に切り替えたところ、風通しの悪さや作業効率の低下など、オフィスの良さを再認識した企業もあります。

ウィズコロナは様々な選択肢が出てきた

リモート会議の普及で様々な選択肢が出てきたといっても過言ではありません。

具体的には以下のような選択肢が考えられます。

• 地方に移転する
• 都心に移転する
• 複数の営業所を統合し大規模オフィスにする
• 小さな拠点を複数設置する
• オフィス面積を広げる（近隣への移転）
• オフィス移転はせずにレイアウトを変更する
• 現状維持
• その他

以上のような選択肢がありますが、従業員の意見をしっかりと聞き、働きやすく、会社の利益がアップする方法を選択することが重要といえます。

ご存じのように、オフィス移転は費用も時間も労力も必要な一大プロジェクトです。場合によっては新たな許認可を得る必要があります。

安易な判断をせず、場合によっては専門家の意見を聞き、判断するようにしましょう。