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原状回復費削減ノウハウ

2021.12.15

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」2021最新版

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」2021最新版


アパートやマンションなど居住用物件から退去する際に原状回復についてのトラブルが多数発生したため、国土交通省が定めたものが「原状回復をめくるトラブルとガイドライン」です。

あくまでも「参考」とするものであり義務とはされていませんが、20204月に施行された改正民法に影響を及ぼしており、2021年においては標準的な取り扱いになっています。

ビルオーナー(大家さん)、不動産会社、入居者の三方がWin-Win-Winになるようにわかりやすくご説明しますので、ガイドラインに合わせた原状回復にしていくことをおすすめします。

法的効力からみたガイドライン

ガイドラインは「参考」ですが、裁判でも活用されているため、目安ともいえるレベルです。

また、20204月に改正施行された民法に、ガイドラインと同様以上の内容が盛り込まれています。参考程度で十分という認識では、すでにダメな情勢になっています。

例えば、ガイドラインでは居住用物件が対象でしたが、改正民法ではテナント物件(事業用)、居住用という区分はありません。事業用物件だから通常損耗も含めて入居者負担が常識だと考えていると痛い目にあってしまいます。

以前と同じように事業用物件で通常損耗を入居者負担とするには、今までと同じ契約内容ではNGであり、適切な賃貸借契約書や特約に変更する必要があります。

ちなみに20203月までに締結した契約なら、改正前民法が適応されます。

ガイドラインによる負担区分

ガイドラインによる代表的な負担区分についてみていきましょう。

賃貸借契約書や特約で細かい点まで、しっかりと決めて双方の合意が取れた状態にしないと、事業用物件でも下記と同じ負担区分になってしまいますのでお気をつけください。

代表的な負担区分一覧

  ビルオーナー負担 入居者負担
鍵交換 次に入居者のために行うもの 鍵を無くした
鍵の返却ができない
クロス テレビの裏側の汚れ(電気ヤケ)
画鋲の穴
ポスターや絵画の跡
釘などで穴をあけた
落書き
タバコ なし クロスにヤニがついた
部屋のにおい
空調機(エアコン)に汚れ、におい
フローリング 日焼けによる変色 家具で傷をつけた
給湯器 劣化による交換 無理な使い方による故障
ハウスクリーニング 専門業者によるハウスクリーニング 換気扇やコンロなどの油汚れ
 

どのくらいの負担になるか、負担割合表の計算方法

どのくらいの負担になるか、負担割合表の計算方法

結論から申し上げますと、計算できない難しい部分も多いので、入居者との話し合いで原状回復の負担割合を決めることになります。

なぜ、難しいのか実際にあり得る例を使って考えていきましょう。

まず、退去時に入居者の原状回復義務があるか、状態をみて判断します。

もし、原状回復義務があるのなら、経年劣化を「考慮するもの」「考慮しないもの(消耗品)」に分けます。

「考慮しないもの(消耗品)」は入居者の負担で交換します。

「考慮するもの」は次の方法で計算します。

新築時点の価値を100%とし、国税庁の減価償却資産の耐用年数表から、耐用年数を調べます。耐用年数になったときの価値を1円としたグラフを作成し、入退去時にどのくらいの価値(残存価値)となっているのか通常損耗(経年劣化分)を計算し、故意や過失による損耗分を計算し、負担割合を決めます。

例えば、カーペットなら耐用年数は6年ですので、新品が6万円であるのなら、「残存価値=60,000-10,000×年数」(有効数字3桁)という式となり、1年後は約5万円、3年後は3万円となります。

新品のカーペットを設置してから1年後に入居し、2年後に退去したとしましょう。

入居時の価値は5万円で、退去時の価値は3万円です。

お部屋をきれいに使っており、シミやカビなど入居者の不注意による汚れや破損がないのなら、退去時にカーペット交換やクリーニング費用を請求することはできません。

一方、飲み物によるシミが退去時に残っていたとしましょう。

飲み物によるシミが残っていた場合、ガイドラインでも入居者の負担で除去することになっていますので、クリーニング費用を入居者に負担してもらうこと自体は問題ありません。

しかし、カーペットも劣化しているので、カーペット全体を交換しようとするのであれば、話が変わってきます。カーペット代金6万円をそのまま入居者に請求することはできず、3万円までしか請求できないのです。

とはいっても、クリーニング費用よりもカーペット交換費用の方が安くなることも考えられます。

お互いのことを考えても、交換した方が安く済むような場合は、双方が納得いく形で金額を決めることになるのです。

ビルオーナーの立場からの原状回復

ビルオーナーの立場からの原状回復

ビルオーナーの立場からみた原状回復の注意点や、トラブル防止方法についてみていきましょう。

原状回復特約が無効になることも

裁判で原状回復特約が無効となる判例が出ていますので、安易に原状回復特約をつけておけばよいというわけではありません。

最高裁平成171216日判決では、次のような判決が出ています。

※わかりやすいように変更していますので、ご注意ください。

  1. 通常損耗について原状回復義務を入居者に負担するには、負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されていること。
  2. 契約書では明らかでない場合は、大家さん(賃貸人)が口頭により説明し、入居者(賃借人)が明確に認識し、合意の内容としたものと認められること。
  3. 特約が明確に合意されていることが必要である。

この裁判では、明確な合意がなかったとされ、原状回復特約自体が無効とされました。

ハウスクリーニングなど通常損耗を入居者負担とするには、明確な合意が必要となるのです。

退去時にハウスクリーニングを入居者の負担で行いたいのならば、具体的な金額と範囲を契約書に盛り込むようにしましょう。

逆にいえば、前もって費用を算出する必要(契約書に記載する必要)がありますから、原状回復特約をつけるのではなく、家賃でハウスクリーニング費用を回収できるようにしておく方が、トラブルが少ないでしょう。

「どのくらい劣化するのが見込めるか予め計算できるので、家賃に反映させておくように」とガイドラインや民法の行間を読むこともできます。

家賃設定は毎月の収益だけではなく、修繕費も考えて設定するのが必須になったともいえます。

トラブルを防ぐためにも

面倒になるのですが、退去時のトラブルを防ぐためにも、賃貸借契約書は細かい点まで明確に記載することが大切です。

トラブルのない経営の方が、トータル的にメリットがあるはずです。裁判やADR(裁判外紛争解決手続)をすると費用も時間もかかってしまいます。

事業用物件(テナント物件)、居住用物件に関係なく、賃貸借契約書や特約には細かい点まで記載する他、図面を添付するなど、誰が見てもわかるようにしておくようにしましょう。

また、今までと同じように退去時に敷金からハウスクリーニング費用を差し引き返金するモデルではなく、入居期間に応じた退去費用を入居前に提示し契約に盛り込む、通常損耗や経年劣化分は家賃に入れておくなどのモデルに変更することを検討してもいいかもしれません。

入居者側からみた原状回復

あやふやなは契約しないことが大原則です。

どうしても不動産取引は慣れない言葉が多く出てくるので、投げ出したくなりますが、分からないことは、すべて聞きメモをとっておくようにしましょう。

日々の清掃をするようにし、ゴミ屋敷にならないようにすること。給湯器や埋め込み型の照明、最初から設置してあったエアコン(空調機)が壊れたのなら、すぐに連絡するなど、日ごろの管理が大切です。

まとめ

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを参考にし、すべての関係者がWin-Win-Winになるように、細かい点まで確認し記載した賃貸借契約書、日ごろの管理をするようにしましょう。

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