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オフィス移転に必要な原状回復の単価

オフィス移転をする際に必要なのが、原状回復の工事費用です。一般的な相場はあるものの、入居されているビルや現状、契約書の内容によって大きく差が出ますので、注意が必要です

事務所の原状回復とは

まず、事務所の原状回復について確認しておきましょう。

建物の取り壊しなどで例外的に原状回復が不要ということもありますが、事務所や店舗などテナント物件であっても、賃貸マンションやアパート、一軒家であっても、退去する際は原状回復が必要です。

しかし、原状回復の内容からすると、事業用(事務所・店舗)と居住用(マンション等)では全く異なります。

項目事業用(事務所・店舗)居住用(マンション等)
いつ原状回復の工事をするか退去引渡し前退去後
経年劣化・通常損耗経年劣化も含め入居者負担経年劣化の分は負担しない
原状回復工事の発注入居者ビルオーナー(管理会社)
解約(退去)予告期間3~6か月1か月
ガイドラインの適応基本は適応されないが、場合によっては適応されるガイドラインが適応される

原状回復ガイドラインとテナント物件

オフィスに限らず、原状回復はトラブルが多いため、国土交通省は平成10年(1998年)3月に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定し平成16年(2004年)2月及び平成23年(2011年)8月に改訂されました。

さらに、令和2年(2020年)4月に賃貸借契約の原状回復に関係する部分が明文化された改正民法が施行されました。

改正民法は住宅、事務所などの区分はありませんが、前述のガイドラインは「民間賃貸住宅」のものであり、住居用マンションをオフィスにしている場合、住居とオフィスを兼用している場合を除いて、参考程度にしかなりません。 「民間賃貸住宅」のものとはいえ、居住用をオフィスとして使用していた場合は、このガイドラインにそって算定すべきとされた判例があるため、しっかりと確認するようにしましょう

参考:国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

大切なことなのですが、民法に規定されている契約自由の原則により、ガイドライン、改正民法、どちらも賃貸借契約に記載されている原状回復の内容が優先されます。

民間の賃貸住宅であってもテナントであっても、賃貸借契約書に「入居者の負担で壁紙の貼り替えを含め原状に復して引き渡す」というような文言があれば、民法やガイドラインがどうであれ契約とおりに原状回復工事を行う必要があります。

オフィス物件の経年劣化・通常損耗は?

先ほども申し上げたとおりオフィス物件の場合、賃貸借契約書・付随する特約で経年劣化・通常損耗を含めて原状回復することが一般的です。

ただし、契約書の内容が曖昧で経年劣化・通常損耗について明記されていないことがあります。

例えば、オフィス物件の退去時に壁紙の貼り替えを入居者負担で行うのが普通であり契約書に詳細を明記しなくてもわかるだろうとした不動産会社と、契約書に明記されていないのだから原状回復で壁紙を貼り替える費用負担はしないとした入居者の間で裁判になった事例があります。この事例では、しっかりと賃借人に伝えていなかった不動産会社に瑕疵があるとされ、契約書にも特約にも明記されていないことから、経年劣化・通常損耗部分について入居者の負担はなしとなりました。

このようなトラブルが多発していることもあり、2020年4月に施行された改正民法では、オフィス物件、居住用物件、店舗用物件に関係なく経年劣化は建物オーナーの負担とされています。

民法で規定されたといっても、賃貸借契約書や特約で明確に原状回復範囲を定め、お互いが了承している場合は、契約書の内容が優先されます。なお、2020年4月以前に締結した賃貸借契約は改正前の民法が適応になりますのでご注意ください。 もし、曖昧な契約書であった場合は、可能な限り早く貸主(建物オーナー)と話し合い契約を見直すなど、退去時トラブルが発生しないようにするようにしましょう。

レンタルオフィスの原状回復は?

東京都心にオフィスを構えられる、入居工事が不要、机や椅子、複合機が備え付けられているなど、スタートアップ企業や個人事業主に人気のあるレンタルオフィスの原状回復は、物件によって様々です。

建物自体が禁煙で壁紙や天井の汚れが予測できるため、コーヒーなどで汚さない限り原状回復は不要としているレンタルオフィスもあれば、退去時に清掃費用の負担があるレンタルオフィス、壁紙の貼り替え天井の塗装が必要になるレンタルオフィスなどがあります。

いずれも入居時の契約書に記載してあるはずですので、内容をよく読んで確認するようにしましょう。

借主義務も確認しておこう

オフィスを借りたとき、下記の義務が借主(賃借人)に発生します。

  1. 借主(賃借人)が賃料を支払う義務
  2. 一般的、客観的にみて適切に物件を使用する義務(善管注意義務)
  3. 契約で定めた内容(業種業態)で物件を使用する義務(用法遵守義務)
  4. 契約が終了したら返還する義務(目的物返還義務)

原状回復は目的物返還義務の一部です。

また、借りているときに建物から水漏れを発見したのに管理会社(貸主)への通報を行わないと善管注意義務違反となり、本来入居者が負担する必要のない工事費用を原状回復工事で負担する必要になることも考えられます。

日頃の使い方、管理が悪く原状回復費用が高くなってしまうこともあります。十分注意するようにしましょう。

原状回復工事の相場

まず、一般的な原状回復工事の坪単価の相場を上に示しましたが、参考程度にしか使えません。参考程度にしかならない理由を、順番にご説明いたします 。

工事業者が契約で定められている

入居時の契約で、原状回復工事を含むほとんどの工事はビルオーナーが指定する工事業者に制約されています。

ビルオーナー側からすれば、信頼できる工事業者に依頼することで、ビルの資産価値を保ち、他の入居企業からのクレーム、トラブルを回避することができます。

一方、業者が指定となってしまうため、工事費用が高額になりがちです。

ハイグレードビルは高くなる

ハイグレードビルの場合、工事に下記のような制約があることが多いため高くなる傾向があります。

現状により大きく価格が変動する

元々、借りた時であった間仕切り壁の無い状態から、会議室、役員室、サーバー室、部署を分けるために設けた壁やドアを設置します。業態によってはオフィスにも営業用のモデルルームがあり、空調や水回りなどを変更している場合、原状回復工事で設備を撤去し元に戻すため、費用が高くなります。

当然ながら、ほとんど手を加えていない場合、原状回復工事の費用は抑えられます。

原状回復工事の相場は上昇傾向

原状回復工事に限らず、建設業界の工事費用は年々と上昇傾向です。主な原因のひとつに職人の慢性的な人手不足があげられます。国も建設業の人材不足に手を打っていますが、2012年(平成24年)以降、改善に至っていません。今後も原状回復工事の坪単価は上昇すると思われます。また、新型コロナウイルスによるオフィス移転が増えてきていることも上昇理由のひとつに挙げられます。

参考:国土交通省 建設労働需給調査結果(令和2年8月調査)について

工事期間にも注意

前述のとおり、人不足で予定している工事期間に工事が出来なくなることもあります。

追加費用を支払い、工事を優先してもらうことが可能であれば良いのですが、場合によっては、退去日を変更する必要があるかもしれません。

日程に余裕がないと、原状回復費用が高くなってしまいますから、退去が決まったら、素早く動くことが大切です。

原状回復の見積りは、9割方高額

大半の場合、原状回復工事の見積もり金額は一般相場と比較して高くなります。

見積の項目が詳細化される

原状回復工事は、数ある工事の中でもシンプルな部類といえます。しかし実際に提示される見積書には、説明を受けても解りづらい項目が多くあります。項目が多くなれば、そこに単価が計上され、各工事の項目が詳細化されれば、理解しづらい事に加え、単価に積み上げにより、総体的に工事費が高くなる要因となります。

本来、負担の必要がない費用が含まれている

どこまで原状回復をするのか、原状回復の範囲が入居時の契約で事細かに決められているのなら別ですが、曖昧な部分が多く負担する必要がない費用が原状回復の見積書に含まれていることがあります。見積書だけでは紐解けない部分は、契約書や館内ルールと照らし合わせてないと正確な判断は困難です。

オフィスの原状回復を適正価格にするには

お伝えしたように、オフィスの原状回復費用は参考程度にしかならない相場しかなく、高額になりがちですが、適正な価格にすることもできます。

賃貸借契約書を細かく確認する

どこまで原状回復が必要なのか情報を集め、賃貸借契約書の入退去に関する条項や工事範囲を示す区分表を読み込みましょう。

相見積もりは効果が薄い

業者が指定されているのに、指定業者を変更する交渉をしようとする方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合、業者を変更することはできません。また、知り合いの業者などに相見積もりを作成してもらい、比較資料として利用する方もいらっしゃいますが、そもそも業者変更が不可能な為、参考資料として有効でない場合が多くあります。

プロに任せる

賃貸借契約書をしっかり読み込み、必要な工事内容を把握し、適正な相場を把握した担当者で交渉したとしても、思うような減額は難しいかもしれません。

仏の沙汰は僧が知るというように、専門家に依頼するのが、オフィスの原状回復費用を適正価格にする最良な選択といえます。

しかし、専門家に依頼したものの原状回復費用がほとんど減額できず、「原状回復費用+専門家への依頼料」が最初に出された「原状回復工事の見積書」よりも高くなってしまうリスクもあります。

そこで、おすすめなのが、完全成果報酬型のコンサルティング会社に依頼することです。

完全成果報酬型であれば、原状回復費用が減額できなかったとしても、原状回復費用の削減が低額であったとしても、専門家報酬が高くならずに済みます。

最初に提出された「原状回復工事の見積書」より、「原状回復費用+専門家への依頼料」のトータル金額が安くなる可能性があるのですから、オフィス移転を考えている、オフィス移転を進めているのであれば、相談してみてはいかがでしょうか。

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